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そうして、あるビルのヘリポートの上へとやってきた。ヘリが着陸しきる前にアメリカは待ち切れなかったらしく、せっかちにかなり高い位置から扉を開けて飛び出して行ってしまった。 轟音と吹き荒ぶ強風の中ポカンと口を開いて唖然とし、飛び出したアメリカを引きとめようと伸ばした手がむなしく彼が消えた屋上の出入り口に向かって揺れる。 「映画のヒーローのつもりですか、全く」 そう言って大きくため息をついたと思われる(ヘッドホンのため傍の小さな音は拾えない)俺と同じく彼のお守を任されたアメリカの良い友人である日本さんが細めた漆黒の瞳でアメリカが飛び降り消えていった外の世界を一瞥した。 「我々も行きましょうか」 日本さんは仕方がありません、と呟きながら立ち上がり屋上に留まったヘリから出ようと立ち上がる。普段会議などで会う時のようなスーツ姿ではなく、だからと言って彼の国の軍服でもない動きやすそうな私服を着ている。 そんな彼の口から飛び出した言葉は僕を驚かせるには十分すぎて、思わず「ほ、本田さん本気ですか?」と勢いよく立ちあがり天井に頭をぶつけてしまった。ヘリの中は狭く天井も低いのだ。 「僕たちまで現地に足を運ぶ必要性はないんじゃ…ほら警察も向かっているみたいだし」 じんわりと痛む頭のてっぺんを押さえながら勢いよく捲し立てて言葉を連ならせると、外を向いていた日本さんがゆっくりと静かに此方を振り向き、静かだけど強かな口調で言った。 「私、実は今回の事件憤慨しているのです。アーサーさんは私の大切な友人ですので……彼がいなくなってしまうなんて考えたくないんですよ」 僕は思わず抱いているクマ吉さんにしがみ付いた。 「後悔などせぬように、老体に鞭打って居るわけです」 日本さんも、アメリカと同じく獲物を見つけた肉食獣の顔をしていたからだ。 ただアメリカと違って彼の場合、にっこりと綺麗に笑んでみせるので兄弟のような関係のアメリカよりも恐怖を一層感じてしまう。 「さぁそのクマをしっかり抱えてあげてくださいね」 虫をも殺せぬような華の笑みを浮かべて彼は言う。僕は黙って頷いた。僕だって彼らと同じなんだ。怒っているし不安を抱いているし心配もしている。だからやることはただ一つ。 「さぁ行きましょうカナダさん」 そう言って彼は軽やかに外へと飛び下りた。僕も決意を固めてクマ五郎さんをしっかりと抱きあげて立ち上がる。 今度は頭をぶつけなかった。 |