目が覚めたら白い天井が見えた
暫く何も思わず考えず呆ける
そのうち鼻を突く匂いがしてきて
少しだけ視線を横にずらしたら
自分の方へチューブを伸ばす点滴が見えた

病院

そう思いついて納得する
この匂いはあの病院の独特の薬品臭
じゃぁなぜ自分は病院にいるのか
怪我をしたから
何故怪我した


思い出した
黒曜に行って
喧嘩して
鈍い衝撃に意識がブラックアウトして

「っ 」

ギシッとベットが軋んだ
慌てて上半身を起こすと体中が悲鳴を上げて鈍い痛みに啼いた
思いの外痛んだ身体にくぐもった声を出し痛みに堪える
それでも、そんなことしている場合じゃない
ツナや獄寺や坊主やビアンキさん
   雲雀

「やっと起きた」

耳に澄んで聞こえた声
バッと顔を上げるとそこにいたのは紛れもない彼で
包帯や絆創膏やらでボロボロだけれど
それでも彼がそこにいて

「ひ・・ばり」

声を出すのが難しかった
乾いた喉は振るわせるだけで痛みを伝え嘆いた

「いつまで寝てるかと思ったよ」
「どの、くらい・・ねてた?」
「丸々3日」

意外な日にちに目を開く

「そんな、に?」
「そうだよ、他の奴等だって直ぐに目を覚ましたのに君だけ起きなかった」
「ツナたちは?」
「隣の病室、しぶとく生きてるよ」

どうでもよさげな雲雀の言い方
それでも彼らの安否は知ることが出来た

「よかった」

そう言葉を吐いて
そのまま後ろの枕へ身体を預けた

「よくないよ」

そう言って目の前のベットに腰掛けていた雲雀
ゆっくりと立ち上がってこちらに歩み寄ってきた

「このまま」

言葉と共に彼の右手がこちらに伸ばされる
薄い長袖のシャツ
チラッと覗いたシャツの合間から
白く白い包帯が覗いて見えた

「君が目を覚まさないかと思った」

いつも威厳に満ちた声が
震えていた

「弱いくせに、喧嘩なんかするから」

こんなにボロボロになるんだ
そう言って自分の頬に添えられた彼の手は
自分の熱を奪っていくほど冷たかった

「ありがとう」
「なんで、礼なんか言ってるの?馬鹿、謝罪の言葉でしょ」
「ありがとう」
「・・・・」
「俺のこと、心配してくれて。ありがとな」

動きそうにない左手はそのままに
右手をゆっくり持ち上げて
頬に添えられた彼の手に重ねた

「ありがとう」

にっこりと笑ってやれば
酷く苛ついた顔になり
噛みつくようなキスをされた










獣ノ憂鬱




080403再録