「今日俺の誕生日なんだ」
知ってますか先輩?っと陽気に普段は言わないような単語で自分の名前を呼ぶ
第一彼の先輩であったのはかなり昔のことで、実際自分と彼の年はひとつしか変わらないのだ
彼はふらふらと自分のベットへと歩み寄って整えられた白いシーツへ身を投げた
「そこは僕のベットだよ」
「知ってますー」
白いスーツに埋もれた声はくぐもって聞き取りにくい
普段の彼とはまた違った軽薄な態度
かすかに漂うアルコールの匂い
「君、酔ってるでしょう」
「そうなのかなぁ」
顔だけ動かしてベットに沈む彼を見る
自分の座っている椅子が僅かに動いた体重に軋みをあげた
「そうだよ、だから早く自分の部屋に戻って寝なよ」
「なぁ雲雀、俺今日誕生日なんだ」
彼は軽い笑みを零しながら、その狭間に言葉を落としていく
「それは聞いた。それにさっきまで大広間でパーティーしてた」
「うん」
先ほどまでファミリー全体でこの酔っ払いの誕生日パティーをしていた
ただ、自分は早々に食べるものだけ食べてその場を去ったのだが
この酔っ払いは言わば主役で、多くの人に囲まれてにこやかな笑みを浮かべていたのだが
今現在、酒に酔った酔っ払いが何をしたいのか僕にはわからない
ただベットに頭を沈め、息苦しそうに呼吸して言葉を投げ捨てるだけ
下手をすればそのまま寝入ってしまいそうな彼に眉が寄る
「そこで寝ないでよ、アルコールくさくなる」
「早く自分の部屋に帰れば」っと続けざまに言い放つ
彼は短く沈黙した後声を発した
「でもな、雲雀ー・・・・・・」
彼は熱っぽい声で自分の名前を呼んで沈黙した
訝しげに彼を見れば、彼は此方を片目だけで見上げ手招きしている
頑としてそこから動きそうのない酔っ払いに溜息をついて、自分の寝床の確保のためにベットに寝そべる彼へ近寄った
脇まで寄って「起きて、寝たら部屋から投げ出すよ」っと少しイラついて言葉を投げるが、彼は未だに寝そべったまま片目だけで自分を捕らえている
こちらに来いっと催促していた手が不意に自分の腕を掴んで引いた
あまりに突然の事に反応するまもなくベットに自分の体が沈んだ
「俺、まだ雲雀からプレゼント貰ってないから」
自分の上にまたがって笑う彼はアルコールくさい
それでも、彼の浮かべる笑みはそんなアルコールには汚染されていなかった
「君、酔ってないね」
「酔ってるよ」
今の現状に眉を寄せながらそう言うと、彼ははにかんだ笑みを浮かべて自分の耳元でそう呟いた
そのまま彼の熱い舌が耳の中をひと舐めして耳朶に軽く噛み付いた
「なに、誘ってるよ?」
「誕生日なんでプレゼントに雲雀を貰おうかと」
そう言って普段と違う笑みを浮かべた
アルコールのせいかそれとも本来こういった笑みを浮かべることが出来るのか
「生憎、僕はあげる人間じゃなくて奪う人間なんだよ」
そう言って、自分の上にまたがる彼の首に手を回し細いくせに頑丈な首を手前に引き寄せ荒い口付けを
暫くの間、彼の口の中を蹂躙し力が抜けた彼の体を引き自分の下へ組み引いた
肩で荒く呼吸する彼
アルコールの熱のせいか、それとも酸欠のせいか
彼の瞳は潤い佩びてこちらを見上げていた「誕生日、おめでとう」と耳元で呟きそのまま彼の赤い唇に触れた
先ほどのように荒い口付けではなく優しく蕩けるような口付けを
余 薫 ア ル コ ー ル
080403再録