「やりすぎだって」
「そう」
背の高い男は無表情に
対してもう一人は、興味なさげに素っ気なく
手に持ったトンファーをひとふり
付着した赤がきれいに吹き飛んで地面に染み込んでいく
「十代目が制裁を与えるってさ」
そこでぴくりと僅かにだが男の表情が動く
制裁を宣告されなことに対してでは無く、目の前の男が友人である沢田綱吉を十
代目と称して呼んだことに反応して
彼は知っていた。男が彼をそう呼ぶ意味を
「それで君が来たわけ?」
「十代目は優しいから自分でやるって言ったけど、俺が頼んで任して貰った」
「君じゃ俺は殺せないよ?」
「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれない」
男の実力を彼は知っていた
優しさ故に苦しませずに相手を葬る
そのために男にはそれ相応の実力が必要になりそして
「へえ、なら楽しませてくれるのかい?」
笑い血染めのトンファーを構える
その仕草に無表情だった彼の表情が僅かに悲しげに歪み
彼の姿が消えた
「雲雀にそんな余裕があれば、な」
背後から迫り来る刃を知覚ではなく、研ぎ澄まされた実践の勘で受け流し後ろへ跳ぶ
ゆらり、とそこには腰に下げていた鞘から鋭く光る日本刀を取り出して立っていた
彼は強い。しかし殺り合った事は無かった。
自分はそれを願っていたが、彼は嫌がった、それに止めるものも多く居りそれは叶わない夢かと思っていたがこんな最高の形で叶うとは
「うん、楽しめそうだよ。山本武」
「それは残念だ」
彼が懐から箱を取り出し指輪に添える
カチャリと音を立て開け放たれた箱の蓋
溢れ出す蒼の炎
戦いの火蓋を切って落とす合図のように
僕らの世界に雨が降り始めた
雨が流して逝ってくれる
080403再録