何かに蝕まれるように痛む体
特注らしいスーツを着るとそれも弱くなったが、暫くは寝ていろと言う大人の彼の言葉に大人しく従った
10年後の山本武に出会えたのは偶然であった
突きつけられた刀と突きつけた銃の狭間で視線がかち合い混ざった瞬間、崩れ落ちた彼の無表情
紡がれた音は紛れも無い自分の名前で、覚えのある声音に「山本か?」と問えば彼は無言で頷いた。泣きそうな顔をしていた
「・・・今だから坊主に言えることがあるんだ」
「なんだ」
彼は寝ていろっと言った折、彼の膝に自分を乗せた
矢張り幾年たっても彼は彼なので心地よく瞼を閉じていると、落ちてきた声
眼を開けて彼を見上げると、遠い眼をした山本が居た
「俺、お前のことが好きだったんだ」
告げられた告白。下を向いた山本はちょっと引きつった微笑を浮かべていた
声は隠されていたが震えていて、そして両の瞳は僅かに潤んでいる
過去形の言葉に、返す言葉もなく黙り込んでいると彼はポツポツと先の言葉を紡いだ
「ずっと、後悔してた。お前に言えばよかったって」
そういって彼は視線をずらす
黙って先を促すと、彼は慎重に言葉を選ぶようにして口を開いた
「でも、ずるいよな・・・。ごめんなリボーン。俺は、」
消えた語尾。泣き出しそうな顔をして眼を閉じた山本
俺は迷うことなくそんな彼の唇と自分と唇を重ねた
驚いたように見開かれた目と目が合う
「バカ野郎」と言って頭突きをかますと、彼は痛そうに仰け反り頭を抑え「いってぇー!」と叫び声を上げた
「悪いのは俺だ」
「え、」
「お前に想いを告げてなかった俺が悪い」
「それって」
「まさか、墓まで持って行ってるとは思ってなかった」
言葉に反応して山本の顔が僅かに強張った
そんな彼を真正面から見上げて言葉にする
「俺は山本が好きだ」
そういった途端ポロリと彼の目から雫が零れ落ちる
あまりに綺麗だったので、手を伸ばして拭ってやることも忘れ去っていた
彼自身も涙を拭うことはせずポロポロ涙を流して
「それ、10年前の俺に言ってくれよな」
とても、綺麗な微笑みだった。
080403再録